香田 和良

企業の枠を超えたプロジェクトを主導:至善館での学びを活かして

Class of 2021(アカデミック・ディスティンクション、リーダーシップ・ディスティンクション)
卒業年:2021年
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今の仕事について、簡単に紹介いただけますか?

エネルギー営業戦略部 カーボン事業チームにて、ネガティブ・エミッション(註1)の探索と、カーボンクレジットの取引や活用に関する企画立案を担当しています。元々、大学院の卒業プロジェクトでブルーカーボンを活用したカーボンクレジット事業を取り上げていましたが、卒業後、会社の社員提案制度を通じて本格的に事業化を検討、今年の1月に正式にカーボン事業チームの新設とブルーカーボンの再生・保全事業への参画を発表することができました。今の仕事そのものが自分のやりたかったことであることはもちろんですが、ブルーカーボンの専門家や、NGO/NPO、国内外のスタートアップをはじめとする既存の海運の枠組みを超えた方々との出会いが多くあり、たくさんの刺激を受けながら仕事に取り組んでおります。気候変動にはこれからの10年が特に重要になると言われており、自分のプロジェクトを通じて社会と地球に少しでもポジティブなインパクトをもたらしていきたいです。

(註1)ネガティブエミッションとは大気中から二酸化炭素を除去・固定することを指し、植林やブルーカーボン(マングローブや海草など)をはじめとする自然ベースのものと、化学工学的技術を使って大気中からCO2を除去する技術ベースのものがあります。

以前はどんなお仕事をしていましたか?

これまで10年間はずっとエネルギー関連の仕事をしてきました。入社してからの4年間は石油製品を輸送するタンカーの運航業務に携わり、三国間輸送を中心に国内外顧客と船を繋ぐ仕事をしていました。その中でも、北南米のパートナーとのアライアンス事業立ち上げのため、ヒューストンで現地スタッフ教育や仕組み作りを経験したことは大きな刺激となりました。その後6年間、LNG船部にて中東・欧州顧客との長期貸船契約や、新規契約の営業業務を担当しました。LNG船は船価が他船種と桁違いに高く、契約やファイナンス、船の仕込みや管理など、多岐にわたる関係者との調整が必要になるビジネスで、海運の仕事の幅広さとダイナミックさを感じることができました。同時に、エネルギー業界に押し寄せる脱炭素の波も身を持って感じることができ、そこで得た問題意識や危機感が現在の仕事につながっています。

卒業後、仕事やキャリアにどのような変化がありましたか?

大学院のゼミのテーマを机上の空論で終わらせたくないと思い、今は会社の社員提案制度を活用して、Intrapreneurとして至善館での学びを実践する日々です。1年間通常の業務を離れて専業で事業化を検討できるのですが、ゼミを通じてファカルティやクラスメートの皆様から事前に課題を指摘してもらっていたことで、とても良いスタートダッシュを切ることができました。卒業式のスピーチとも重なりますが、会社には①仕事を持っている人、②キャリアを積んでいる人、③自分なりの使命を持っている人の3パターンの社員がいるようです。至善館で学ぶ前の私は②の社員で、会社から与えられたレールの上をただ進んでいましたが、今は自分なりの使命に向かって道なき道を進む感覚です。不安もありますが、共感してサポートしてくれる仲間やパートナーの存在のお陰で不思議とワクワク感の方が大きく、自分の中でこのような変化が起こったのは至善館の学びあってのことだと思っています。

至善館での学びと、その学びのあなたのキャリアへの影響について、どのように振り返りますか?

至善館での学びの中で特にキャリアに影響しているものは、「何事も自分事として考える主体性」と「自分の置かれた立場から生じる責任を受け入れる覚悟」だと思います。

社会人になって10年、いつの間にか会社という狭い枠にはまり、漠然とした不安を感じながら主体性の欠けた日々を過ごしていました。至善館のプログラムを通じて、尊敬できる恩師やクラスメートと議論する中で、自分を閉じ込めていた狭い殻がなくなり、世界中で起きている環境・社会問題に対して、自分が何をしたいか、何ができるかと常に自分事で考えるようになりました。また、これまでは行動しないことへの言い訳を作ってばかりいましたが、自分の置かれた環境は多くの人に支えられて成っていることを改めて理解し、謙虚さをもってその環境から生じる責任を受け入れる覚悟を持ったことで、自分のキャリアに対するオーナーシップが格段に強くなったと感じています。

あなたのリーダーシップの旅の次のステップについての展望は?

ゼミで構想を考え始めた時はあくまで私一人のプロジェクトでしたが、今では有難いことに至善館や会社、社外のパートナーの皆さんなど、多くの方々の共感に支えられ、「みんなのプロジェクト」になってきていると感じています。こうした共感の輪をさらに広げ、プロジェクトを通じて社会と地球に少しでもポジティブなインパクトをもたらしていきたいと思っています。気候変動自体が時間を争うものであることに加え、ビジネスとして行う以上はめまぐるしく変わる環境の中でスピード感をもって取り組んでいくことが非常に重要になるので、トライアンドエラーを高速回転させて、一つ一つ実践を積み上げていきたいです。

至善館に応募しようとしている将来の仲間へメッセージをお願いします。

ゼミで構想を考え始めた時はあくまで私一人のプロジェクトでしたが、今では有難いことに至善館や会社、社外のパートナーの皆さんなど、多くの方々の共感に支えられ、「みんなのプロジェクト」になってきていると感じています。こうした共感の輪をさらに広げ、プロジェクトを通じて社会と地球に少しでもポジティブなインパクトをもたらしていきたいと思っています。気候変動自体が時間を争うものであることに加え、ビジネスとして行う以上はめまぐるしく変わる環境の中でスピード感をもって取り組んでいくことが非常に重要になるので、トライアンドエラーを高速回転させて、一つ一つ実践を積み上げていきたいです。